本研究では、CA(セル・オートマトン)を適用しミクロな視点から構築した、都市の土地利用動態モデルの基本部分を構成する、各セルの用途別土地利用遷移ポテンシャルの算定ルールを、長期間にわたる土地利用変化の詳細メッシュ統計資料を統計手法を適用して解析し、実証的に同定することを目的とする。 具体的な研究対象地域には、首都圏内の近郊地域(千葉県柏・松戸広域圏、我孫子市地域、木更津市地域、佐倉市地域、東京都多摩地域、横浜市地域)を選び、1974年から1994年にわたる期間、5年間隔の10mメッシュ単位の土地利用データと関連統計メッシュデータを利用して、実証的に算定ルールの構成とそれらに含まれるパラメータ値を地域間比較分析結果も踏まえて推定する研究を進め、大都市圏内の近郊地域(都心から20kmから50km程度の範囲の地域)における、農林系利用から都市的利用への用途転換、および都市的用途間の利用競合の現象を記述できるモデルの精緻化の研究を進展させた。 千葉県柏・松戸広域圏を対象とした、100mメッシュ単位の研究では、用途別土地利用遷移ポテンシャルの要因に従来考慮していた、利用による効用・収益に関連する要因の他に、費用に関連した要因である「地価」を含めた新モデルを提案した。新モデルは、従来のモデルによる、過去の土地利用変化に対する説明精度に比較して、かなり高い精度を実現できた。我孫子市地域、木更津市地域、佐倉市地域、を対象とした50mメッシュ単位の研究からは、住宅用途への遷移ポテンシャルについて、近隣の土地利用状態を説明要因とした関数の形状が、地域の違いによらずほぼ同様であることも、確認された。 東京都多摩地域、横浜市地域を対象とした50mメッシュ単位の研究からは、地域の特殊性を考慮して、標高あるいは交通利便性を遷移ポテンシャルの説明要因に含めることにより、説明力を向上できることが確認された。
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