研究概要 |
医療事故には様々な形態があるが,どの病院でも事故件数の上位を占めているのが与薬ミスと転倒・転落である.与薬ミスは,注射薬,内服薬,輸液などを施行する際に,量や種類を誤って投与する誤投与や,施行すべきものをし忘れる未投与などの事故である.また,転倒・転落は,患者がベッドや車椅子から落ちる,歩行中にころぶなどにより負傷する事故である.この2種類の事故で,全事故の70%程度を占めており,これらを減少させることにより大きな効果が期待できる.本研究では,これらの2大事故に絞って減少させることをめざした. 平成14度は,与薬ミスの問題に主に取り組んだ.主に与薬の標準プロセスと実際に行われた作業の関係に着目して事故データを分析し,事故の原因を明らかにした.さらに,対策案の候補を挙げ,医療者側と実施可能性を議論し,エラープルーフ,ミス検知方式などのミス防止の方法論,工程管理,変更管理,設備管理などの管理方式の適用可能性について検討した.その結果,事故事例の分析方法,レポーティングシステムの提案を行うとともに,いくつかの対策案を実施し,事故防止に効果があることを検証した. 平成15年度は,転倒・転落の問題に取り組んだ.患者の病態,身体的特性などのアセスメントを行い,転倒・転落を起こした人,起こしていない人のデータを収集した.このデータを数量化II類で分析し,二つの集団の違いを明らかにした.また,このアセスメントに基づく看護計画,対策立案表などを提案し,実際に適用して事故低減に効果があることを確認した.与薬ミスについてもさらに研究を進め,標準化推進の方法論,ミス防止対策立案の方法論を確立した.
|