研究概要 |
本研究の目的は,中部九州の主要な活火山:九重火山,阿蘇火山,雲仙火山の湧水にマグマ起源の二酸化炭素(CO_2)の混入が認められるか,認められるとすればそのような湧水の分布はどのような地質構造の規制を受けているか,火山全体の湧水としてはどのくらいのマグマ起源のCO_2の流出フラックスがあるか,火口や噴気地帯から火山ガスとして放出されるCO_2の量と比べて大きいのかそれとも小さいのかといったことを同位体水文学・地球化学的調査によって明らかにすることである. 本年度は,2003年月に阿蘇火山の湧水約60箇所で簡易水質測定と流出量測定ならびに化学・同位体分析用の採水を行った.採取試料については,水の水素・酸素同位体比(δD・δ^<18>0)測定,主要溶存成分の化学分析と溶存全炭酸(DIC)の濃度および炭素安定同位体比(δ^<13>C)の測定を行った. 水の水素・酸素同位体比から,調査した湧水(浅層地下水)はすべて天水に由来し,マグマ性水蒸気の混入の形跡は認められないことが分かった.DICの炭素同位体比(δ^<13>C)と濃度およびCO_2分圧(P_<CO_2>)の関係から,阿蘇火山の湧水はマグマ性CO_2の混入を受けていないことが示された.以上のことから,阿蘇火山の場合,マグマ起源ガス(マグマ性CO_2)の混入を受けた湧水(浅層地下水)は存在せず,雲仙火山や九重火山と異なることが明らかとなった.
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