1999年台湾集集地震や1999年トルコ・コジャエリ地震のように、大規模な地表断層が発生した場合、地表断層の近傍で大振幅の速度波形(約400kineまで)や永久変位(約10mまで)が観測されている。特に長周期における振幅レベルは現行の耐震設計レベルを凌駕しており、神縄・国府津-松田断層を初め危険度の高い大規模な活断層を多く抱える我が国の建物やライフライン施設の耐震安全性を考慮する上で大きな問題となっている。以上のことから本研究では、地表断層の発生による大変形を考慮した実用的かつ解析的な強震動シミュレーション手法を開発し、プログラムコードをWeb上にて誰でも使用できるように公開した。手法として成層地盤を対象とした解析的なグリーン関数と運動力学的震源モデル用い、特にグリーン関数の動的解と静的解を厳密に分離することで効率的かつ精度の高い地震動評価手法が開発された。横ずれ断層や逆断層モデルを用い、地表断層近傍の基本的な地震動特性を調べた。特に1995年兵庫県南部地震で注目された長周期パルス波はグリーン関数の動的解が寄与し、断層面直交成分が卓越し、距離減衰も小さいのに対し、1999年台湾集集地震で注目された地表断層の大変位(fling step)はグリーン関数の静的解が寄与し、断層面すべり成分が卓越し、距離減衰が大きいことを明らかにした。手法の妥当性は1994年米国のランダース地震の断層近傍で観測された波形を再現することで確認した。得られた成果は、日本建築学会、日本地震学会、米国地球物理学会などで発表し、論文として米国地震学会の論文集(Bulletin of Seismological Society of America)で公表した。
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