研究概要 |
周期的に変化する電流は,周辺に電磁波を放射することができる.プラズマ中で伝搬する電子プラズマ波は,プラズマ密度nの平方根に比例したプラズマ周波数ω_pで振動しているので,その周波数の電磁波を放射することが可能である.しかし,その電磁波はプラズマの外,つまり実験室では観測できない.なぜなら,放射された電磁波の周波数ω_pがプラズマ中の電磁波のカットオフ周波数となっているため,プラズマ中で強く減衰されるからである.高密度プラズマでは,プラズマ波の電場も大きく,周波数も高いので,この電磁波が外部に取り出されれば,高出力・高周波の電磁波となりうる. このような状況の中,今回垂直静磁場をレーザーの伝搬方向に印加し,実験を行った.集光したレーザーによりプラズマは瞬時に形成され,長手方向に1.5〜2mm程度の長さに形成された.磁場は,最大7kGであった.放射電磁波は,クリスタル検波器によって計測された.時間分解能は,オシロスコープの時間分解能で決まり,約100psである.放射電磁波の周波数は,用いた導波管の群速度分散を用いた飛行時間法(time of flight)を適用した. これらの計測により,最大周波数50〜70GHzの短パルス電磁波(パルス幅約200ps)が観測された.発生電磁波の周波数には,高周波源の成分と低周波の成分の二つが観測され,高周波源の成分は,磁場に対して平行な電場成分が主であり,低周波の成分は,磁場に対して垂直方向の電場成分が観測された.このことは,電磁波の生成過程に二種類があることを示唆している. この実験結果より,磁場に対して平行な成分は,プラズマ電子がイオンによって発生する電場を感じて周期運動することによって発生していることが考えられ,また,垂直な成分では電子バーンシュタイン波に関係する電磁波の発生過程が考えられる.この仮説を今後研究をすすめることによって,明らかにしていく予定である.
|