研究概要 |
以下の実験および理論的検討を行った。 1)電子補給を制御した状態で帯状流形成とイオン流抑制の実験を行った。その結果,電子補給を制御しない時と同様に,プラズマの回転数の増大に伴い,A)衝突回転イオン流の形成,B)イオン流の増大とらせん波の励起,C)イオン流の抑制と偏芯運動,D)局所低密度リングの形成の4領域が存在した。 2)上記のA,B, C, Dの領域を詳細に検討した結果,電子の補給量が多い場合の現象は,ガス圧が低い場合の現象に対応していた。この事実は,ガス圧が多くなると電子の軸方向の補給が十分でなくなる事を意味しており,ドリフト波の不安定性メカニズムと直接関係していることが明らかになった。 3)最も重要な実験結果は,径方向電場による径方向イオン流抑制効果である。実験的には衝突が多い時,または電子の補給量の多い時に抑制効果が明確に現れた。 4)さらに,B)とC)の状態の間に,2つの準安定な状態の間を行ったり来たりする遷移状態が存在することも明らかになった。この時,プラズマは,まず中心部に集まり中心部のプラズマ密度が増大するとらせん波が増大し,腕に沿ってイオンが径方向に放出され中心部のプラズマ密度は減少し,再び中心部にプラズマが集まるという過程を繰り返した。 5)またm=1,2のらせん波の非線型現象を観測した。すなわちm=2のらせん波は安定に存在するわけではなく,m=2の2本の腕が次第に近づき,ついには1本の腕になることによりm=1からm=2に遷移した。 6)これらの実験結果を説明するため,Rosenbluth-Simonの導いた低周波波動方程式に,磁場に平行方向の電子補給効果,中性ガス衝突効果を取り入れた。この結果,方程式はフルート波から,安定なドリフト波までの広い範囲の低周波波動を記述できるようになった。Kono-Tanakaの式に比べてもイオンラーモア効果が取り入れられ,磁場方向の波数領域が広げられたことになる。 7)上記の拡張された低周波波動方程式を用いることにより,径方向局所電界が抵抗性ドリアト波不安定におよぼす影響を理論的に調べた。現在までに得られた初期的な計算結果は,電界がない時,プラズマの密度勾配はドリフト波不安定に起因する径方向輸送により崩れるが,局所電界があるとこの密度勾配は崩れずに保たれることを示している。
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