研究概要 |
14年度に得られた実験結果をさらに詳細な実験により精密化するとともに,理論的研究をも推し進めることにより,以下のような新たな実験データを得、その物理的な意味を明らかにした。 1、化物陰極を円とリングに分割することにより放電拡散プラズマに径方向の電界を印加し,装置内のプラズマ端に配置した酸化物陰極から放出される電子の補給を制御することにより,フルート波型からドリフト波型までプラズマの変動を制御した。この結果、イオン拡散流の電子補給量依存性は,ガス圧依存性と同様な特性を示した。不安定の原因が衝突性ドリフト波不安定性であるとすれば、この依存性は説明できる。 2、この時、同時にリング周辺の直流的なプラズマフロー,イオン拡散流の詳細な実験データを得た。観測された低密度リングの形成時には、低密度リングが帯状流を形成し、イオン拡散流を制限していることを示している。 3、一方,拡散イオン流はプラズマ中に励起される変動に直接関係しているので、昨年度に購入したA/D変換ボードを追加することに強化された多点プローブによる磁場に垂直な2次元密度変動を観測した。らせん波が励起されると同時にイオン流が増大する。励起されたらせん波は安定ではなく、絶えず消滅、再励起を繰り返す。同時に測定した径方向の拡散イオン流も減少、増大を繰り返す。これは、衝突性ドリフト波不安定波が十分に発達した結果、非線形性により消滅、再励起を繰り返すものと考えられる。 4、帯状流形成とイオン拡散流抑制効果の関係を理論的に明らかにするために,昨年度に得た,Rosenbluth-Simonの論文を基に磁場に平行方向の波長領域を拡張しプラズマ中の低周波波動を記述する微分方程式を用いて具体的に計算した結果,帯状流が存在することにより径方向イオン流の抑制を示唆する計算結果を得た。具体的には、局所径方向電場を増すことにより、方位角方向モードm、径方向モードnにかかわらず、角周波数固有値の虚数部は減少し,衝突性ドリフト波不安定性は抑えられることが分かった。すなわち、帯状流が形成されることにより、衝突性ドリフト波不安定性が抑えられ,それに伴って径方向イオン拡散流が抑制されることになる。 5、さらに、この計算の過程で,密度勾配がないときに径方向電場を印加することによって生じる,イオン音波ラーモアー半径ドリフトモードが電場の強い場所で,局所的に励起されうることも理論的に見出した。
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