研究概要 |
太陽光発電において,コスト低減と省資源の点から,将来的にシリコン薄膜太陽電池が有望視されていことから,本研究では,薄膜太陽電池の高効率化において必要となるシリコン薄膜を形成する手法を開発することを目的としている。そのため水素ラジカルCVD法を利用して,最終的に2段階成長法による高品質な薄膜の作製をねらいとしている。今年度は,微結晶シリコンの成長過程に注目し,特に薄膜構造の膜厚依存性と基板依存性について調べた。 1.微結晶シリコン薄膜構造の膜厚依存性 膜厚3μmまでの薄膜をガラス基板上に作製し,原子間力顕微鏡(AFM)により観測した。膜厚400nm程度までは粒径が約30nmの微結晶が成長し,膜厚がさらに増大すると,それらが集合して大きな構造が形成されるようになり,その構造が表面ラフネスとして現れることが確認された。最大10個程度まで集合した構造が観測された。アモルファス初期層の影響を調べるため,縦方向導電率を測定評価した結果,横方向導電率に比べて5桁以上小さい値が得られ,アモルファス層を薄くすることの重要性が確認された。 2.微結晶シリコン薄膜構造の基板依存性 ガラス基板とアルミニウム基板とで,薄膜構造の違いを比較した結果,基板の表面構造(ラフネス)の影響が強く現れることが分かった。結晶粒径には,大きな違いは認められなかった。基板に正負のバイアス電圧(0〜100V)を印加して薄膜への影響を調べた結果,紫外線反射率(E_2ピーク)の測定結果から,結晶化率がバイアス電圧に依存することが認められた。その原因として,プラズマ中のプラスイオンが膜成長表面に作用していることが考察された。
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