吸収式ヒートポンプにおける吸収器の小型化を図るため、吸収液が流下する壁面に微細フィンを設け吸収を促進する方法につき研究を行った。吸収液にはLiBr水溶液を用い、水蒸気で満たされた容器内に置かれた巾30mm、高さ115mmの鉛直冷却壁面に沿って吸収液を流下させ、吸収前後での溶液濃度変化から水蒸気吸収速度を求めた。壁面フィンの寸法は巾1mm、長さ5mm、高さ1.5mm、フィン間隙間3mmとした。実験条件は溶液濃度60%、系圧力2.13kPa、壁温20℃とした。まず溶液入口温度を入口濃度に対する平衡温度である60℃とし、種々の溶液流量に対する水蒸気吸収量測定をフィン壁面および平滑壁について行った。その結果、溶液流量が小さい場合には平滑壁では液膜が筋状となるのに対し、フィン壁面では巾方向に均一に流れ、流量が小さい程吸収量が大きいこと、またフィン壁面の吸収速度は平滑壁の約3倍大きいことが分かった。さらに実験と対応した数値解析を行った結果、液膜が筋状となる平滑壁の低流量を除いて解析結果と実験結果は概ねよく一致し、フィンによる気液界面の直接冷却と流れの攪拌が吸収促進に有効であることが分かった。次に溶液入口温度を過冷却状態(20℃)として実験を行った結果、フィン壁面では入口温度60℃の場合に比べ吸収速度が約50%増加することが分かった。さらに界面活性剤として2エチル1ヘキサノールを添加する実験を行った。その結果、平滑壁では吸収促進効果が見られたのに対しフィン壁面では吸収速度が低下した。次に壁面を冷却せず(壁面断熱)、溶液入口過冷却のみにより吸収を行ったところ、フィン壁面でも界面活性剤により吸収が促進された。以上の結果を総合し、フィン壁面を用いることにより壁面冷却の場合で平滑壁の約3倍、壁面断熱の場合で約2倍の吸収速度が得られ、吸収器のコンパクト化に有効であることが明らかとなった。
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