研究概要 |
本研究は二酸化炭素の臨界点近傍で二酸化炭素とメタノールを混合させた時に現れる大きな発熱に着目し,この熱効果を利用した環境対応型ヒートポンプの開発を目的として着手したものである.本年度は,昨年度までに設計したヒートサイクルシステムを更に検討し,システムの完成を目指して次の諸項を行った. 1,ヒートシステムの流れは基本的には昨年度と同じであるが,部分的に次のような改良を行った. (1)混合に伴う発熱をより高めることができないかどうかについて,ミキサーの構造を種々検討し,有効な構造を選定した. (2)混合流体を再び二酸化炭素留分(気相)とメタノール留分(液相)とに分離する気液分離器について,分離器をめぐる圧力制御を円滑に行わせるため,その内容積を大きくし,併せて液の一室滞留量の維持を図った. (3)リサイクル二酸化炭素の液化を容易にするため,ブースター・コンプレッサーユニットを導入し,操作の定常化を図った. 以上の改良を加えたシステムでミキサーでの発熱量を水との熱交換により回収し,理論発熱量の約50%が回収できることを確認した.現装置は小規模のため,流体の昇温に伴う顕熱に消費される割合が多いと思われるが,本研究での成果は実機(吸熱システム)の設計に有用と考えられる. 2,本研究では,ヒートサイクルの検討と併せて,二酸化炭素と組み合わせる新規流体の検索も行った.精密熱量計により,種々の流体について検討したところ,含フッ素エーテル類ならびにジアルキルカーボネート類が,アルコール類の約2倍の発熱量を与えることが明らかとなった.この成果により,本ヒートサイクルを実用化に向けて大きく前進させることができた. 3.臨界点近傍での混合熱の圧力・温度依存性を予知するための試みとして,高圧下での混合熱の推算法を検討した.今後は,冷熱システムのための流体検索を含めて推算法の研究を進めたいと考えている.
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