研究概要 |
放射性ヨウ素廃水は、原子力発電分野を始めとして、医療分野での診断および治療並びに研究分野において産出される。一方で、自然界へのそれらの排出は、それら核種が体内へ移行し易いこと、あるいは生体毒性を有することから厳しく規制されている。 本研究課題では、これら放射性ヨウ素廃水が水中において陰イオン性を呈することを基礎として、(1)強塩基性交換基を膜内に高密度に導入した4種類の陰イオン交換濾紙膜の開発,(2)開発された濾紙膜に対する放射性ヨウ素の選択吸着性あるいは選択透過性の非平衡熱力学を用いた現象論方程式による解析(溶液/膜間のイオン分配を示す導電性膜透過係数および膜内のイオンの拡散を示す拡散性膜透過係数),(3)放射性ヨウ素の陰イオン交換濾紙膜透過に対する共存電気的中性物質の影響,および(4)分離方式としての隔膜拡散浸透法および隔膜電気浸透法の比較検討に関する研究を実施した。その結果、セルロース骨格に、trimethylhydroxypropylammonium基を導入し、叩解・抄紙した陰イオン交換濾紙膜は、ヨウ素イオンに対する選択性が高く、塩化物イオンの約3倍の膜透過性を有することが明らかとなった。また、当該膜は、中性分子の共存下においてもヨウ素イオン流束を減じることはなかった。さらに、本研究課題にて開発した陰イオン交換濾紙膜を利用した電気浸透法では低電流密度で、大きなヨウ素イオン流束が得られ、太陽光パネル程度の電流で稼動する省エネルギー型自動放射性廃水処理システムの開発に近づくことができた。
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