研究概要 |
藻類に利用可能な懸濁態リンの定量法を開発するために、懸濁態リンをリン源とした藻類増殖能試験と、懸濁態リンの連続抽出法について検討を行った。 藻類増殖試験においては、降雨時流出河川水を用いたリン制限下での増殖試験の結果、溶存態リンのみを含むろ過水よりも懸濁態リンも含む未ろ過水の方が藻類増殖量が多く、懸濁態リンによる藻類の増殖が確認できた。また、前処理として試料水に滅菌操作を行った後、少量の河川水を添加したバクテリアが存在する系と、河川水無添加でバクテリアが存在しない系での藻類増殖能の比較から、バクテリアによる分解も懸濁態リンの藻類利用にとって重要な経路であること、バクテリア分解を伴う藻類増殖には時間遅れが生じていることがわかった。この懸濁態リンによる藻、類増殖量は、リン酸態リンの場合に比べて低く、懸濁態リンのすべてが藻類増殖に利用されているわけではないこともわかった。 連続抽出法においては、種々用いられている連続抽出法を検討し、懸濁物質を1M塩化アンモニウム溶液、0.11MBD溶液、1M水酸化ナトリウム溶液、0.5M塩化水素溶液を用いて順次振とう抽出し、最後に過硫酸カリウム分解を行い全リンの抽出を行う手法を採用した。それぞれの抽出溶液は、リン酸態リン濃度を定量するとともに、過硫酸カリウム分解後のリン濃度も測定した。この連続抽出法によって、森林出口と水田地帯の下流で、降雨時に河川に流出する懸濁物質を分画したところ、水酸化ナトリウムで抽出されるA1結合無機リン、微生物体に含まれるリンやフミン酸リンの比率が高かった。また、降雨初期には、水田地帯下流においてBD溶液で抽出されるFe, Mn結合無機リンの比率が高くなった。流域の森林土壌、水田土壌等についても同様の分画を行った結果、Fe, Mn結合無機リンは水田から流出していることがわかった。
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