研究概要 |
懸濁態リンの連続抽出法を長良川の本川と支川の計6ヶ所で低流量時と降雨に伴う流量増大時に採水したサンプルに適用し、画分別の濃度と比率を求めた。また、流出源と考えられる流域内の森林と水田土壌及び培養藻類についても同様に連続抽出を行った。連続抽出法により懸濁態リンは8つに分画することができたが、それぞれの画分で抽出される代表的な性質から、高反応性吸着リン、低反応性吸着リン、Fe,Mn結合無機態リン、塩基可溶性無機態リン、易分解性有機態リン、Ca結合無機態リン、難分解性有機態リン、抽出不可能リンと名づけた。 河川懸濁物、土壌、藻類ともCa結合無機態リン、難分解性有機態リン、抽出不可能リンの比率は低くなったが、比率の高い成分についてはそれぞれで特徴があった。森林土壌は、塩基可溶性無機態リン、易分解性有機態リンの比率が高く、水田土壌はFe,Mn結合無機態リンの比率が高くなった。また、藻類は、高反応性吸着リンと低反応性吸着リンの比率が高く、2つで全体の約70%を占めた。 河川の低流量時の懸濁態リンの分画では、高反応性吸着リンと低反応性吸着リンの比率が降雨時に比べて高く、平水時の懸濁態リンは、流域内の土壌よりは藻類等の生物由来の比率が高いことがわかった。また、停滞域の長良川下流でこれらの比率が最も高くなり、藻類の増殖を反映する結果となった。降雨に伴う流量増大時には、これらの比率が低くなるが、支川によって森林土壌の比率に近くなるものと、水田土壌の比率に近くなるものに分かれて、河川によって降雨時の懸濁態リンの主要な流出源に違いが見られた。
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