研究概要 |
年間流出負荷量のうち、降雨時流出の占める比率を算定した。算定5年間の平均では、年間流出流量に対して流量の多い10日間の流出流量は21%であり、溶存態成分はほぼ流量と同じ比率であった。これに対して懸濁態成分は流量以上の比率を占め、懸濁態リンと懸濁態炭素は46%、懸濁態窒素は40%になった。20日間では流量の31%に対して懸濁態リンと懸濁態炭素は60%、懸濁態窒素は54%になり、全リンでは54%にもなった。このことは、高流量から20日間でリンについては年間の全流出負荷量の半分以上が流出することになり、降雨時の流出負荷量の大きさがわかる。 河川流出懸濁態リンに連続抽出法を適用し8つに分画することができ、それぞれの画分で抽出される代表的な性質から、高反応性吸着リン、低反応性吸着リン、Fe,Mn結合無機態リン、塩基可溶性無機態リン、易分解性有機態リン、Ca結合無機態リン、難分解性有機態リン、抽出不可能リンと名づけた。 森林土壌は、塩基可溶性無機態リン、易分解性有機態リンの比率が高く、水田土壌はFe,Mn結合無機態リンの比率が高くなったが、降雨時に流出する懸濁態リンは、塩基可溶性無機態リン、易分解性有機態リンの比率が高い場合と、Fe,Mn結合無機態リンの比率が高い場合に分かれた。降雨時に流出する懸濁態リンを、これら組成の違いにより、森林土壌と水田土壌に分けた場合、森林土壌の寄与率が50〜80%になった。 懸濁態として流出するリンのうち、高反応性吸着リン、低反応性吸着リンは、下流域の閉鎖性水域において藻類に利用可能なリンと考えられるが、その流出比率は低かった。また、易分解性有機態リンは、バクテリアによる分解を受けてリン酸態リンになり藻類に取り込まれる可能性がある。 これらの成分の流出負荷量に占める比率は約38%であり、懸濁態リンのうち約4割が藻類利用可能性のあるリンであると推定できた。
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