研究概要 |
本研究初年度ではアマゾン熱帯林の閉鎖林・ギャップ再生林・裸地における微気象観測と閉鎖林での毎木調査・樹幹横断面の導管解析を行った。 9月の乾期に行った放射収支は、裸地では日中の短波放射量が1000w/m^2に達したが、再生林では800w/m^2以下、閉鎖林では100w/m^2程度であった。反射日射も天空率に応じて裸地>再生林>閉鎖林となった。下向き長波に地点間の差は見られなかったが、上向き長波は昼間の-600w/m^2に対して夜間の-450w/m^2と日較差が見られた。総じて、正味放射量は下向き短波に規定されて、光量子束密度も同じ位相であった。熱収支への分配は、昼間の裸地では顕熱への配分が大きく、植被率が高まるにつれて潜熱の比率が高くなった。しかし、夜間は上下の長波放射の差と地中熱の放出で凝結が起こり、裸地では日没直後に他地点よりも潜熱に多く配分されていた。その後、夜明けまで凝結が継続したことは絶対湿度やボーエン比の時間変化から確認された。 1.9ヘクタールの閉鎖林を対象にした毎木調査では214種・1938個体の樹木、14種・1064個体のヤシが確認され、樹木は5-10mクラスが最大頻度で、0-5mの空間はヤシが代替していた。この閉鎖林で65種・218個体の樹幹サンプルを入手し、2001-02年形成分の成長輪の導管指標を調べた。導管面積率VAと樹高THは一次式で回帰され、1mm^2あたりの導管分布数Nと導管直径Dは負のべき乗式で回帰され、ND^2とVAはほぼ同値であった。これらの3式を用いて、毎木調査の各樹木個体のVA、D、Nを推定した。有効範囲は採取サンプルの樹高のばらつきに規定されるが、総じて、高い樹木は水分の吸引効率を上げるためにVAが高く、そのためにはNを増やすのではなく、Dを拡大することによって対応していた。サンプルを随伴柔組織と独立柔組織に分けると,Dの拡大がより顕著に見られた。
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