研究概要 |
本研究ではアマゾン中部マデイラ川沿い、ノボアリプアナン近郊の林冠突出型低地林において、1999年形成の小規模のギャップ(CP:400m^2)と2001年形成の大ギャップ(CG:2500m^2)で被圧を受けてきた下層樹木の成長を調べ、農地開発用に造成したオープンスペース(CA)を含めた3箇所で観測した気象パラメーターを比較した。5箇所の大ギャップ(CG:合計1.25ha)では42科・178種・1,236個体の樹木と12種・811個体のヤシ、5箇所の小ギャップ(CP:合計0.2ha)では31科・88種・224個体の樹木と7種・74個体のヤシがあった。肥大成長はCP区では1999年に突然突出し、その後は漸減傾向に転じたが、CG区では2001年に急激に上昇した後もギャップ形成以前よりも高い水準を維持した。また、両区とも樹幹横断面の導管面積率はギャップ形成前年より2倍前後に拡大し、伸長成長が加速したことがうかがえた。エネルギーの源である下向き短波放射量はCA>CG>CPで、それにともなって正味放射・光合成有効放射・地中熱流量・気温・地温もほぼ同位相を示したが、相対湿度・露点温度・絶対湿度はその逆パターンであった。この違いは天空率から説明され、林冠に覆われた比率の高い小ギャップは低温・高湿で安定し、被覆のないオープンスペースは昼間は高温・低湿、夜間は冷却・凝結で日振幅の激しい気象環境にあることを示す。しかし、閉鎖林と異なり、小ギャップでも直達日射の影響は存在し、これが下層個体の成長にプラスに作用した。
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