研究概要 |
円筒状の採泥器により採取した大村湾海底堆積物を水平に切り分け、鉛210の放射能を測定することにより、堆積した年代や、土砂の流入量を推定した。同時に、堆積物内の放射性同位元素(γ線放出核種)の量を測定した。また、周辺陸上の岩石を採取し、岩石内の放射性同位元素の量を測定、地質図に準拠した岩石名などを調べた。大村湾の海底は一部を除いて極めて平坦であり、測定された試料の範囲では、堆積物の堆積速度も年あたり0.1mm程度で極端な差がない。鉛210以外の放射性同位元素の量もあまり大きな違いはない。 採取した試料は、広島大学原爆放射能医学研究所において、放射化分析を行い、Na,Al,Cl,K,Sc,Mn,Fe,Br,Sr,I,La,Ba,Sm,Euの各元素を検出することができ、Hg、As、Cdは検出されていない。現在、これらの経年変化を分析中である。当初予定していたPIXEの測定は、加速器の不調のため、行うことができず、今後試みる予定である。 鉛210の測定における計数効率の校正は、放出されるガンマ線のエネルギーが低いことに起因する、技術的に微妙な困難を含んでいる。今年度は、測定の標準となる試料を入手して、効率校正を厳密化して、精度を上げることができた。外部から堆積した鉛210の量を推定するためには、堆積物自身に含まれるウラン系列核種から生じた鉛210の量を推定する必要がある。この場合には、試料内から発生するラドンガス(やがて鉛210となる)の散逸が不確定要素となる。測定を精密化するため、ラドンガスの散逸を防ぐ方法などについても検討した。
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