研究概要 |
1969年Askania Gs-11 重力計を用いてVostok基地(78.466°S,106.832°E,3478m asl;ロシア)で、Schneider(1971)によって得られた重力潮汐データの再解析を行った。BAYTAP-G,-L(Tamura et al.,1991)を用いて観測振幅と位相を求め、海洋潮汐による荷重潮汐を、2つのグローバルモデルNAO99b(Matsumoto et al.,2000),FES99(Lefevre et al.,2000)を用いて評価した。観測振幅からWahr(1981)の理論潮汐モデルを用いて計算した振幅と潮汐荷重振幅を、位相図を用いてベクトルとして差し引き、残差ベクトルを求めると、K1に対する値は1.91±0.25μGalで、M2については1.24±0.14μGalだった。標準誤差はDietrich et al.(2001)の結果の1/3になった。残差成分は基本的にK1,M2で表現できることがわかり、-0.29μGal/mmの変換係数により地表変位として表わすと、K1について6.6mm, M2について4.3mmで、全振幅は±10mmとなるが、2002-2003年に実施したGPS地表(雪面)変動観測ときわめて調和的だった。Lake Vostokでは潮汐だけでなく、大気圧変動も上下変位を引き起こすはずである。この効果を質量保存に基づき、平衡潮とinverse barometerによりモデル計算した。湖の差し渡し両端での潮汐ポテンシャルの差から、日周・半日周潮の最大成分で2-3mm振幅の高さ変化が生じる。湖上での大気圧差によるinverse barometer効果の差は数日から数週間のタイムスケールで、40mmの高さ変化に対応する。2002/2003シーズンの現地での差分GPS観測は、このモデル計算結果を支持している。GPS観測による最大分潮の振幅と位相は平衡潮の差分に対応している。ERS-1/-2タンデムシーン4ペアによる表面変位の空間分布パターンは、振幅は変化するものの幾何形状が似通った、"たわみ"を持つbulgeで特徴づけられ、湖水中ではそのまわりで水の再配分による循環を伴うことがわかった。
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