研究課題
近年、東京湾などで内分泌攪乱作用が報告されているコノシロは、汽水湖沼である宍道湖で毎年大量死が発生して問題となっている。本研究は海産種のコノシロが、いつ、どの位のサイズで宍道湖に侵入するのか、デトリタス食とされている本種が具体的にどのような物を食べているのか、また同化された有機物は湖のどこで生産されたものか(淡水河川の影響が強いところか、逆流する高塩分水の影響が強いところか)を明らかにし、さらに、大量死が生じた際には、死亡個体群が湖のどの場所で摂餌していたかを安定同位体比を測定して解析して、大量死をもたらした物質が農業起源(淡水側)か、都市排水起源(高塩分水側)かを推定することを目的としている。本年度は宍道湖東端の高塩分水逆流口にあたる位置と西端の淡水流入口に近い位置で、予備的に行っていた3月の採取を含め、2002年3月から2003年1月にかけて毎月定置網でサンプルを採取した。また6月から夏季の長期に渡って斃死個体が観察されたので、それらも採取した。サンプルは体長、湿重量、生殖巣重量を測定した。筋肉部は冷凍保存後凍結乾燥してホモジナイズし、29サンプルについてダイオキシン濃度を分析した。安定同位体比は現在、分析中である。消化管内容物を検鏡するサンプルは、別途刺し網を用いて採取した。サンプルはホルマリン固定を施して保存してあり、近日中に検鏡する。これまでの分析で、斃死が始まった6月には雌雄共に産卵・放精によって生殖巣が萎縮していることが分かった。また死亡個体とそうでない個体ではどちらも繁殖後の生殖巣の萎縮が認められたが、斃死個体のサイズの方が大きめであった。
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