研究概要 |
精巣腫瘍の増加、精子数の減少、不妊の増加、乳癌の増加、子宮内膜症の増加などが「内分泌撹乱物質」との関連を懸念されている。我国の約13万人の女性が内膜症治療を受け、患者数は100万人を越えるとまで言われている。内膜症の発生と進展に与える内分泌撹乱物質の影響は、PCB、DDT、ビスフェノールAなどのように直接エストロゲンレセプターを介するものが先ず第一に考えられるが、ダイオキシン類のようにサイトカイン制御異常から免疫防御機構の破綻が原因することも大いに考えられる。流産防止の目的でジエチルスチルベストロール(DES)を投与された妊婦から生まれた子に、膣癌、子宮形成不全、精巣萎縮などが発生し大きな社会問題に成ったことは余りにも有名な話しである。本科学研究費補助金の援助を得て、イソフラボン、ビスフェノールAなど内分泌撹乱物質のマウス子宮腺筋症と乳癌の発生と進展に与える影響を、子宮腺筋症と乳癌が自然発生してくるSHNマウスを用いて検討した。SHNマウスは商業的には購入不可能な閉鎖系のために、当該実験動物施設内でのみ自己繁殖が可能であり、繁殖作業と実験作業を平行して行っている。そのために研究計画は未だ終了しておらず、現在も進行中であるが、一応の結果は得ている。また、本研究中に派生的に生じた興味ある実験結果を報告した。すなわち、血管新生阻害因子がこのマウス子宮腺筋症の進展を抑制するというものである(Fertil Steril 80 : 788-794,2003)。
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