葉緑体DNAマーカー(trnL-trnF領域)、核DNAマーカー(ITS領域のTaq1による制限酵素断片長多型)、フローサイトメーターによる相対DNA量を組み合わせて、日本産2倍体タンポポとセイヨウタンポポの雑種を判別する方法を開発した。これにより、新潟市及び東京23区とその周辺のセイヨウタンポポについて雑種の判別を行なった。両地域とも、3倍体雑種、4倍体雑種、雄核単為生殖雑種(葉緑体は在来種型、核は帰化種型)があった。新潟では4倍体雑種が49%を占め、純粋なセイヨウタンポポは18%にすぎなかった。東京においても純粋セイヨウタンポポは11.8%しがなかったが、雑種のうち最も多いのは3倍体雑種(57%)であった。一方、全国から採られたのアカミタンポポについては、純粋な帰化種型が66%を占め、雑種のうち最も多かったのは雄核単為生殖雑種(23%)であることがわかった。 日本に導入されたばかりの移入種では、種子発芽可能温度域が在来種のカントウタンポポに比べ、高温側に幅広く、休眠性もなかった。雑種についても、おおむね種子発芽可能温度域がやや高温側に広がっていた。既存の「外来種」の知見と同様に、移入種と雑種の成体の多くは夏季にも葉を展開した。東京周辺の調査から、雑種と外来種を含む非在来種および在来種に酷似した形態の雑種は、樹林で出現しにくかった以外は、土地利用に対し特別の選択をせずに出現したが、在来種は農地、土堤などで出現しやすく、樹林では特に出現しにくいということはなかった。以上のように、雑種の多くは従来の「外来種」に近い生態的特徴と生育地をもつので、花粉検定により在来種と非在来種との判別が適確に行なわれるなら、従来の環境指標性は適用できる。一方、雑種のなかには少数ながら生態的性質が異なるものがあり、今後の動向を追跡する必要がある。
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