研究概要 |
6-ホルミルプテリン(6-FP)は痛組織から分泌される葉酸代謝物質であり,細胞内でスーパーオキサイドを消去して過酸化水素を生成し,生体防御に関与することが報告されている.フローサイトメータにより,細胞内過酸化水素の生成を測定したところ,6-FP単独処理およびX線照射により増加し,両者の併用でさらに増加した。さらにアポトーシス誘導について検封したところ,6-FPは細胞毒性を示さない渡度で放射線アポトーシスを増強した.そこで,これらの知見を踏まえて,温熱によるアポトーシスに関する細胞内過酸化水素生成の影響を調べ,6-FPの温熱増感剤としての可能性を検討した. ヒトリンパ腫細胞株U937細胞を用いて,6-FP存在下で温熱処理し,6時間後のアポトーシス指標(DMA断片化,形態学変化,細胞内過酸化物質の生成,ホスファチジルセリンの細胞外膜発現,ミトコンドリアの膜電位の低下,カスペースの活性化,シトクロムCの遊離および細胞内Ca^<2+>濃度)について調べた. 形態学的観察の結果,6-FP併用温熱処理でクロマチン凝集や核断片化が促進された.DNA断片化率は温熱単独処理に対し,6-FP併用処理で約30%増強された.PI/AnnexinV-FITC陽性細胞は温熱単独処理で10%であるのに対し,6-FP併用温熱処理で20%に増強された.ミトコンドリア膜電位の低下とカスパーゼ-3の活性化が,温熱単独処理に比べて6-FP併用処理により増強された.細胞内Ca^<2+>濃度は温熱単独処理により増加し,6-FP併用処理によりさらに増加した.細胞増殖も6-FP併用処理で抑制された.また,ウエスタンの結果としては,Bax,Bcl-2,Bcl-xlの発現レベルが不変であること,BidおよびHSP70の発現レベルが6-FPと温熱の併用により抑制されること,6-FPと温熱の併用によりPKCδのミトコンドリアへの移行が促進されることが判明した.
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