研究概要 |
本研究は,医療被曝の主要部を占める診断X線による患者の被曝実態を調査・解明するために,X線機器の種類や使用法によらず,しかも極めて簡便に人体のいろいろな組織・臓器の被曝線量を測定できるように,人体ファントムの種々の臓器位置に能動型線量計であるシリコンフォトダイオードX線センサーを埋め込み,X線照射による各センサーからの信号をコンピュータで取得・解析して,その場で各臓器の被曝線量を表示することが可能な,新しい型の臓器線量計測システムを開発することを目的としている。今年度の研究成果を以下に示す。 1,前年度作製した臓器線量計測システムを使用して,標準的なX線CT検査方法で臓器線量を測定し,その結果を,従来の,人体ファントムに埋め込む線量計としてTLD素子を使って測定された臓器線量文献値と比較して,合理的な臓器線量値が得られるよう,ファントム内線量計設置位置の修正,線量計の追加など,改良を加えた。人体ファントムに32個のフォトダイオード線量計を埋め込み,各臓器線量,実効線量を算出するようにした結果,同一CTスキャナ・検査方法で測定された文献値と良く一致するデータが得られるようになった。 2,改良後の臓器線量計測システムを,名古屋大学医学部附属病院を始め近隣8箇所の大規模医療機関に持ち込み,現在実際に診療に使われている種々のCTスキャナを使用して,胸部,腹部,頭部の標準的検査方法,並びにX線照射量を抑えたがん検診モードなど,現在および今後使用されることが見込まれる種々の方法で臓器線量を測定し,実効線量を評価して,CTスキャナの機種別,検査部位・手法別被曝線量データを取得した。 3,本システムを用いて,CT検査以外の通常の診断X線検査による臓器線量の測定を行い,実効線量を評価することにより,CT検査の結果と合わせて,X線検査別被曝の実態解明のための基礎データを取得できた。
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