研究概要 |
近年、日本に飛来する黄砂は、中国北西部や黄河流域の砂漠地帯の拡大により、年々飛来回数、濃度共に著しく増加している。韓国では黄砂期間中に心血管及び呼吸器系の疾患による死亡率が増加したとの報告があり、黄砂による健康被害が深刻な問題となっている。我々は本科研費助成金(平成14-15年)による研究課題「ダニ抗原誘発性気管支喘息に対する黄砂の影響評価に関する研究」において、黄砂は単独で暴露した場合、気管支肺炎や肺胞炎を惹起し、活性酸素によるDNA傷害を誘発することを見出した。また、黄砂が抗原によって誘発される気管支喘息モデルの病態(気管支周囲の好酸球浸潤・粘液細胞の増生)を著しく悪化すること、この病態には種々の炎症性サイトカイン・ケモカイン類(IL-5,eotaxin, MCP-1)が関与していることが明らになった。また、抗原特異的-IgEやIgG1抗体産生に対するアジュバント作用があることを見出した。本黄砂の研究成果は、大気浮遊粒子状物質中の通常50%存在する土壌由来の粒子がディーゼル排気微粒子と同じように気管支喘息を増悪する環境因子であることを示唆するものであり、世界的に注目されるものである。
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