研究概要 |
層状金属酸化物細孔材料としてハイドロタルサイト,バーネサイト,四チタン酸塩について,イオン性官能基を持つ有機分子の層間への取り込み機能について検討した. ハイドロタルサイトは層間に陰イオンをもつ層状複水酸化物で.溶液から三リン酸基をもつサイズの大きな有機分子であるATPを層間に取り込むことを明らかにしており,陰イオン性汚染有機分子一般について層間への取り込みが可能であるものと考えられた.この除去処理において,水中に分散する汚染有機分子を含んだハイドロタルサイト粒子が浮遊流出したり,凝集粒子が多量の水を含むため水との分離が不十分になるおそれがある.そこで,ハイドロタルサイト粒子を重力以外に外部からの力によっても制御することを目的として,マグネタイト粒子と複合化し分離濃縮に磁力を利用することを考えた.マグネタイト粒子の存在下アルカリ溶液中にマグネシウムとアルミニウム塩混合溶液を滴下し,ハイドロタルサイトを生成させた.このとき両粒子間には強い引力相互作用はないが,これを窒素雰囲気400℃で10時間熱処理すると,超音波処理によって分離しない複合体が得られた.この熱処理温度でハイドロタルサイトは脱水し酸化物になるが,水溶液に加えると再びハイドロタルサイトに戻り,陰イオン交換能を発揮することを確かめた. バーネサイトについては,イオン性有機分子としてアルキルアミンが層間に導入されることを示したが,そのためには層間陽イオンをプロトンで置換する前処理が必要であった.しかし,バーネサイトの前駆物質であるブセライトを目的イオンの溶液と接触させると,プロトン化処理を必要とせずに層間イオンとの置換が起こることを明らかにした.これは,実際の水処理操作において操作工程数を少なくできることを意味し,大きなメリットになるものと考えられる. 四チタン酸塩の層間イオンと外部溶液中のイオンの交換では,直接交換反応は起こらないが,バーネサイトの場合と同様層間陽イオンをプロトンで置換する前処理をすると,層間プロトンと溶液中の陽イオンが交換することはすでに明らかにしている.このような手法でサイズの大きな陽イオン性有機物分子が層間に導入できるかどうかは,次年度の検討事項とする.
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