平成14年度から2年間の研究では、地域社会でのエネルギー需給の自立をめざすシステムを設計し、その運用性能を解析した。ケーススタディのモデル地域として、岩手県の葛巻町を対象として検討を進め、下記の研究成果を得た。 1.エネルギーシステムの構成要素を定義。 東北の山村地域にて盛んな酪農業、および林業を考慮して、牛糞のバイオガス利用および森林バイオマス資源の熱・エネルギー利用を想定した。これに加えて、既に実績のある太陽光発電と風力発電を含めて、エネルギーシステムの構成要素として抽出した。 2.コスト低減と安定運用を目的とするエネルギーシステムの設計。 町全体を対象にした電力供給を行うシステムと、牧場サイトに限定して熱電併給を行うシステムの2条件について、設計した。前者では、木質バイオマスのガス化発電の導入が進み、電力供給の約4割を賄えること、残りは風力発電にて賄い、風況による変動の調節として若干の系統電力を必要とすることがわかった。後者では、乳牛の糞尿利用によるバイオガス発電は設備費コストが割高のために導入はほとんど進まない。ただし、糞尿の処理費用として有償価格を設定することによって、電力供給のシェアが増大することがわかった。 3.環境影響についての考察。 二酸化炭素排出量は、本エネルギーシステムを導入することによって半分以下まで低減できることがわかった。設備費と運転費用、および燃料費を総計した全体費用については、概ね現状と同じになることが明らかになった。ただし、バイオマス利用設備の商用化が十分ではなく装置の費用が割高でかつ利用効率の低い状態にあるために、今後の装置の普及に伴って、コストの低減が期待できる。 以上の検討から、地域の自然エネルギー及びバイオマスエネルギーを利活用できるエネルギーシステムを設計し、その性能を明らかにした。
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