研究概要 |
最終年度である16年度は家庭系有害廃棄物の循環システム構築に向け,モデルケースとして水銀を含む蛍光管を取り上げ,水銀含有製品の物質フロー解析(Substance Flow Analysis : SFA)およびリスク評価により,蛍光管の循環システム構築の可能性と方向性を検討した。水銀含有製品のSEへの結果,日本において利用されている製品に由来する水銀は,ライフサイクルを通して年間10〜20t流通しており,そのうち約5tが蛍光管に由来していること,また回収されている水銀は約0.6tのみであり,大半が中間処理を経て最終処分されていることがわかった。つづいて,蛍光管の循環・廃棄過程に着目して,京都市を想定した水銀フローに基づいてリスク評価を行った。現在のリスクは水銀のフロー量を指標にして,焼却処理,破砕処理,埋立処分の工程がそれぞれ34kg-Hg,17kg-Hg,21kg-Hgと大きく,リサイクル工程に起因するリスクは4kg-Hgと小さかった。これに対して,蛍光管の回収・リサイクルシステムを導入した場合,究極的には全量をリサイクルする循環システムを構築することが可能であり,その際のリスクは水銀フロー量で47kg-Hgとなり,ほぼ半減できることが予想された。しかし,そのためには,回収への高い参加率や閉鎖系での再生品利用までを考慮に入れた循環システムを実現する必要があり,一般市民への情報周知や適切な回収システムの検討に加え,何らかの規制策や新たな技術およびビジネスモデルの創出を検討すべきであると考えられた。
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