研究概要 |
自然界より単利した水銀耐性株Acidithiobacillus ferrooxidans SUG2-2株は塩化水銀濃度が6μMまで増殖が認められた。本株を順次水銀濃度を上昇させた二価鉄無機塩培地に植え継ぎ,単離することによって20μMの塩化水銀存在下でも増殖可能な高度水銀耐性株MON-1株を得た。両株による水銀廃液,水銀汚染土壌からの水銀気化回収システムおよび遺伝子導入株の検討を進めている。本報告では水銀気化能の解析結果を紹介する。1mgの洗浄細胞を140nmolの水銀を含むpH2.5の酸性水20mlに懸濁し,30℃で3時間インキュベートした。水銀気化量はSUG2-2株が4.7nmol,MON-1株が27nmolであった。MON-1株は反応時に100μmolの二価鉄を添加することによって気化量が約2.6倍(71nmol)に増大したが,SUG2-2株では気化量が5.8nmolで大きな増加が認められなかった。またMON-1株の洗浄細胞による水銀気化にKCNは強く阻害したが,ロテノン,HQNOは阻害がなかった。さらに無細胞抽出液によるNADPH依存性のmercuric reductase活性に関しては両株に大きな差異はなかった。以上の結果から,MON-1株の二価鉄依存性の水銀還元システムの強化はCytochrome coxidaseが強く関与しているといえる。 A.ferrooxidansにorganomercurial lyase活性の存在は報告されていない。今回MON-1株の中に本活性が存在するか否かを検討した。A.ferrooxidans12株について,0.1μMのp-chloromercuribenzene(PCMB)を含む二価鉄培地で増殖を調べた結果,MON-1株が最も強い耐性を示した。更に0.1μMのPCMB,酢酸フェニル水銀,メチル水銀を含む酸性水に洗浄細胞を添加した場合の水銀気化速度は,MON-1株が最も速く5日で100%気化した。MON-1株洗浄細胞の105,000g上清画分には,NADPH存在下でこれらの有機水銀からの水銀気化活性が認められ,MON-1株に本活性が存在していることを強く示唆した。
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