H15年度は、河川生態系の健全性を河川生態系の構造とそれに由来する機能の側面から評価する手法を具体的に検討した。河川生態系モデルに実際の係数値を入力し水質の変化の予測に関する実用性を検討した。このモデルでは、流水部と河床とに分け、河床には生産者と分解者、また、藻類食者を導人している。流水部には無機栄養塩類、有機物および懸濁物食者の項を設定している。今回の検討では、瀬での生物生産活動に焦点をあてた。 藻類食者や懸濁物食者が存征しないときの河川生態系の機能についてまず予測している。基本的には、一次生産者による無機物の有機化が顕著な傾向として表れている。このような場台、温度の上昇、照度の上昇などで夏場に有機物生産がピークをむかえ、それにともない水中の無機量の割合が減り、温度が低下すると共に回復すると予想される。ところが、河川生態系の機能的な多様性が存在すると結果が大きく変わってくることが予想された。藻類食者が加わると一次生産者による有機化の程度が多少抑えられる傾向が見られた。しかし、懸濁物食者に関しては、その効果は見られなかった。ところが、この両者が出現すると一次生産者の有機化が大きく抑えられる効果が予測されたのである。また、これらの機能群が、一次生産者の有機化作用を抑えることができるのはTNが1ppm以下のときと考えられた。これらの結果から、河川の健全性を定義することが可能となろう。河川の群集の機能的な多様牲があれば、つまり健全であれば、無機物の割合は周年に渡って比較的安定すると考えられる。しかし、藻類食者や懸濁物食者の減少など多様牲が低下すると無機栄養塩類の割合は、夏少なく冬多い周期性を示すと考えられる。しかし、このことはTNが1ppm以下の時に成立すると予想された。
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