研究概要 |
重油流出事故による沿岸域の重油汚染や製油所跡地の重油成分浄化技術として、栄養塩を対象地域に散布し油分解菌を増殖させて分解を促進する手法(バイオレメディエーション)が注目されているが、本手法の有効性を評価する為には油分解菌の挙動を解析する事が重要である。自然界に存在する細菌の多くは培養が困難である為、16SrDNA情報に基づいた細菌群集構造変化の解析が一般化しているが、本手法では系統分類学上の情報しか得られない。このため本研究では、油分解に関与する各種機能遺伝子の定量的解析に係る手法の開発を行い、油汚染浄化処理に伴う油分解菌の機能変化を明らかにする。本年度は、以下の点を明らかにした。 (1)前年度は水域における油汚染浄化処理に伴う油分解菌の機能変化を明らかにしたが、本年度は土壌を対象として行った。重油汚染土壌の一部を系外に持ち出して分解菌の賦活化を行い、これを種菌として再び元の系に戻すカラム集積培養法が考えられているが、汚染土壌に栄養塩類を添加することにより細菌群集構造は大きく変化し芳香族化合物資化性能を持つプロテオバクテリア属細菌が優占化して、重油成分の減少が認められた。また、カラム集積培養土壌を元の汚染土壌に再還元する事により、重油成分の分解が約2倍に促進され、多環芳香族化合物の分解に関わるSphingomonas属やRhodococcus属細菌の優占化が観察された。 (2)芳香族化合物分解菌の持つ分解酵素遺伝子(catechol-1,2-dioxygenaseおよびcatechol-2,3-dioxygenase)に着目し、その挙動を解析した結果、いずれかを有する細菌が極めて多数検出され、重油分解が著しく行われている試験開始初期にはそれらの菌が優占化し、重油分解が行われなくなると検出されなくなることが明らかとなった。 以上の成果は、本評価技術がバイオレメディエーション技術の有効性評価および安全性評価に有効であることを示す。
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