研究概要 |
重油流出事故による沿岸域の重油汚染や製油所跡地の重油成分浄化技術として、栄養塩を対象地域に散布し油分解菌を増殖させて分解を促進する手法(バイオレメディエーション)が注目されているが、本手法の有効性を評価する為には油分解菌の挙動を解析する事が重要である。自然界に存在する細菌の多くは培養が困難である為、16SrDNA情報に基づいた細菌群集構造変化の解析が一般化しているが、本手法では系統分類学上の情報しか得られない。このため本研究では、油分解に関与する各種機能遺伝子の定量的解析に係る手法の開発を行い、油汚染浄化処理に伴う油分解菌の挙動変化を明らかにした。主たる成果は以下の通りである。 (1)汚染油の主成分であるアルカン類と芳香族化合物の分解に関与するアルカンヒドロキシラーゼ遺伝子alkB、catechol-1,2-dioxygenase遺伝子(C12O)、catechol-2,3-dioxygenase遺伝子(C23O)をターゲットにした特異的PCRプライマーを設計した。次いで、これらの遺伝子を保有している標準株および油分解能を有している分離株を用いて本プライマーによる検出の有効性を検討した結果、油分解菌の殆どと反応し、有効性を実証する事が出来た。 (2)海岸に設定した汚染浄化実証試験現場から経時的に土壌試料を採取し、上記プライマーを用いて各油分解遺伝子の時系列変化を検討した。この結果、栄養塩散布により、alkBおよびC12Oが速やかに活性化される事が明らかとなった。 (3)上記検出用プライマーを重油汚染土壌にも適用した結果、C12OおよびC23Oのいずれかを有する細菌が極めて多数検出され、重油分解量と並行して増減することが明らかとなり、土壌試料にも応用出来ることが示された。 以上の成果は、本評価技術がバイオレメディエーション技術の有効性評価および安全性評価に有効であることを示す。
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