1 標本および文献等の調査による予備的分布データベースの作成 茨城県立博物館、栃木県立博物館、東北大学において標本・文献調査を行った。標本についてはデジタルカメラにより撮影してデジタルデータ化した。関東地方以北の太平洋側各県(茨城、埼玉、栃木、群馬、福島、宮城、岩手)について、各県の博物館の報告書や地方植物研究会誌等の文献を調査し、また各県の研究者やアマチュアに問い合わせて、ブナやブナ林の分布に関する情報を収集した。標本情報149件、文献による情報186件、私信12件を収集し予備的な分布データベースを作成した。 2 分布および植生に関する現地調査 上記の分布データベースを参考に、3回にわたり、茨城県および栃木県、福島県南東部において現地調査を行い、14地点の毎木および植生調査データ、44点のブナ生葉サンプル、100点あまりのブナ乾燥標本を収集した。これらのデータは現在、データベース化と解析を進めているが、従来、認識されているよりも低標高部にブナが点在して分布することが明らかとなりつつある。 3 花粉分析調査 筑波山、加波山周辺の表層土壌サンプルの採取、南那須町における堆積物サンプルの採取を行い、花粉分析を実施した。堆積物サンプルの分析と年代測定の結果から、約2万年前の森林の組成は、針葉樹林の卓越する森林から落葉広葉樹の増加が開始する段階にあり、カバノキ属、シナノキ属、コナラ亜属とともにブナが含まれていた。シナノキ属の出現は茨城県桜川低地の結果と類似するが、コナラ亜属の低率での出現は異なっておりマツ科針葉樹が優勢であった。
|