研究概要 |
1.青森県下北半島において,識別個体の成獣メス4頭について,昨年度および今年度の繁殖状況を確認した.昨年度生まれの1年子は0頭,今年度生まれの当年子は1頭であった. 2.長野県上高地において,食物の質(タンパク質含有率)を明らかにするため,冬期(2月)と初春(4月)に糞を回収し,糞中窒素量(FN)を分析した.上高地の2月のFNは1.48±0.13(N=14)であり,以前の調査で得られた下北半島の2月のFN値(1.46±0.21)との間で有意差は認められなかった.上高地の4月のFNは1.54±0.17(N=13)であり,下北半島の4月のFN値(1.87±0.25)との間で有意差が認められた. 下北半島と上高地の成獣メスのなわばりサイズは,約10haと約100haと大きな違いがある.しかし,このなわばりサイズの差異は,以前行った下北半島と山形県朝日山地(なわばりサイズが約30ha)の比較結果と同様に,冬期の食物の質によっては説明されなかった.下北半島と朝日山地の比較では,冬期の食物の量に差異が認められており,今後,下北半島と上高地の冬期の食物の量について比較検討する予定である.
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