新規構造と顕著な生物活性を有する海産ポリエーテルマクロライド天然物の全合成と絶対配置決定を目的として研究を展開した。平成14年度は、主に、渦鞭毛藻由来の貝毒で殺癌細胞活性を有するペクテノートキシン2を合成標的として、全合成研究を行った。ペクテノトキシン2を4つのフラグメントから収束的に合成する経路を立案し、それぞれのフラグメントを個別に合成した。続いて、スルホンカップリングとエステル化を用いて全てのセグメントを連結し、最後に閉環オレフィンメタセシスを鍵反応として環化して、全体のマクロライド構造を構築した。これにより、官能基を保護したペクテノトキシンのC7位のエピ体を合成することができた。しかし、その脱保護は、詳細な検討を加えたが、不成功に終わった。そこで、保護基と合成経路を再検討し、これまでの合成経路に立脚しつつ、段階的な保護基の変換を経る全合成経路を新たに考案した。この計画に基づいて、4つのフラグメントを合成し直し、大幅な経路の短縮と収率の向上に成功した。さらに、それぞれの連結と、保護基の変換にも成功している。ここで、保護基の変換には、多官能性化合物の多段階合成を考慮して、穏和な条件下で行うことのできる方法を新たに開発し採用している。この保護基変換法は、シガトキシン部分構造の構築を通じて、関連する縮合型ポリエーテル骨格構築に利用可能であることも明らかにできた。今年度の目標のペクテノトキシン2の全合成には至らなかったが、合成上新たに生じた課題は解決できており、来年度早期にはその全合成が完了できる見通しである。
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