研究概要 |
新規構造と顕著な生物活性を有する海産ポリエーテルマクロライド天然物の全合成と絶対配置決定を目的として研究を展開した。渦鞭毛藻由来の貝毒で殺癌細胞活性を有するペクテノトキシン2を合成標的として、全合成研究を行った。また、別種の渦鞭毛藻から単離されたアクトミオシンATPase活性制御物質であるゴニオドミンAの絶対配置決定を目指した合成研究を行った。 ペクテノトキシン2の合成では、標的化合物を4つのフラグメントから収束的に合成する経路を立案し、それぞれのフラグメントを別個に合成した。続いてスルホンカップリングとエステル化を用いて全てのセグメントを連結し、最後に閉環オレフィンメタセシス反応により環化して、全体のマクロライド構造を構築した。その結果、官能基を保護した7-epi-ペクテノトキシン2を合成する事ができた。なお、スピロアセタール部に隣接する酸素官能基上の保護基の選択が本合成では非常に重要であった。当初、ベンジル基を保護基として用いてスピロアセタール形成からマクロラクトン構造構築に至る過程を実現できたが、保護基の除去に難点があった。そこで、この保護基をパラブロモベンジル基およびパラメトキシベンジル基に変えて合成を検討した所、いずれも最終的な除去が可能となり、ペクテノトキシン2の全合成達成に不可欠の知見を得る事ができた。 ゴニオドミンAは相対および絶対配置が未決定なので、その究明を目的として合成経路設計と部分構造の合成法の開拓を行った。,ゴニオドミンAの全体構造をA環部、BC環部、DE環部、F環部、C26-C30部の5つのセグメントに分割し、それぞれを合成した後に、天然物のスペクトルデータと比較検討する方法を採る事にした。実際に、これらセグメントのうち、環状エーテル構造を含む4つの部分の合成法を確立する事ができた。その結果、立体化学決定と全合成の両方に有益な知見を得ることができた。
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