研究概要 |
本研究の目的は,キラルなバックボーンを有する新規人工核酸の合成を行い,骨格のキラリティーに基づく高次構造形成能,分子認識能を調べることである。これまでに,光学活性セリンを基本骨格とする新規核酸類縁ポリエステルの合成を計画し,光学活性モノマーユニットの合成反応,エステル結合生成反応,保護基の除去条件を確立した。本年度は,固相合成法によるオリゴマーの合成を試みた。固相担体とモノマーを連結するリンカーとして,フッ化物イオンとの反応により切断可能な化合物を合成し,固相担体への導入反応,切断反応,モノマーユニットの結合反応について詳細に検討した。本研究で開発した新規脱水縮合剤を用いると,液相合成と同様に,固相担体上でも良好な収率でエステル結合を生成できることがわかった。しかし,オリゴマーを固相担体から切り出す際に,エステル結合の加水分解が起ることが明らかとなり,目的物を高収率で得ることはできなかった。そこで,新たに中性条件下オリゴマーの切り出しが可能な固相合のための新規リンカーをデザイン合成した。このリンカーは,分子骨格中にアジドメチル基を有するため,中性条件下還元反応によってこれをアミノメチル基へと変換することにより分子内環化反応を伴い迅速に目的物を固相担体から遊離させることができる。同様に,アジドメチル基を有するベンゾイル型の保護基を核酸塩基部に導入したアデニン誘導体の合成も検討した。チミン誘導体の場合と比較して,水酸基の保護反応が困難を極めたため,合成ルートの変更を余儀なくされたが,最終的に目的とするアミノ基に中性条件下除去可能な保護基が導入されたモノマーを得ることができた。現在,アデニンおよびチミン塩基を有するオリゴマーの固相合成を検討している
|