研究概要 |
1.Cytotoxic moietyの分子設計:生体内還元活性化プロドラッグの設計・合成(堀):還元活性化されて殺細胞効果を発揮するファルマコフォアの候補として,N-oxide体及びニトロ芳香環とその還元体について検討するために,リード化合物であるtriazine-N-oxide誘導体のtirapazamine(TPZ),TX-1102及びquinoxaline-N-oxide誘導体のTX-402の大量合成のためのルートの最適化を行った. 2.上記化合物の低酸素細胞毒性,血管新生阻害活性,アポトーシス誘導能の解析(永沢):in vitroアッセイ系としてマウス乳腺肉腫由来EMT6/KU、ヒト大腸がん由来HCT116細胞等の固形がん由来細胞株のほかに,新たにp53変異遺伝子導入細胞とその野生型株を導入して,その変異が本化合物の低酸素細胞毒性に与える影響について解析したところ,上記hypoxic cytotoxinは,両細胞において,p53の変異の有無にかかわらず強い低酸素細胞毒性を示した.SAS細胞ではアポトーシス誘導作用が観察された.血管新生阻害の初期スクリーニングとして鶏卵漿尿膜(CAM)法においてhypoxic cytotoxinに強い血管新生阻害作用がみられた.特にTX-402は酸素化の毒性が低く低酸素選択性が高いことから,TPZよりすぐれたhypoxic cytotoxinであると考えられた. 3.アポトーシスシグナル,低酸素応答シグナル分子発現制御の解析による標的分子の同定(永沢):上記の細胞を用いて,低酸素または大気条件で上記プローブ化合物処理による低酸素応答分子(HIF-1,VEGFなど)及びアポトーシスシグナル分子(p53,caspase, Baxなど)の発現変化をRT-PCR, RNAブロット及びWesternブロットにより解析したところ,hypoxic cytotoxinは,低酸素で特異的にHIF-1及びその下流の低酸素ストレス応答遺伝子産物の発現を抑制することが明らかになった.
|