研究概要 |
3,4-ジアリールピロールを基本構造として持つラメラリン、ニンガリン等の海洋アルカロイドは、薬剤排出タンパクが発現した多剤耐性ガン細胞に対して強い細胞毒性を示す。従ってこれらの天然物は難治性多剤耐性ガン治療薬のリードとして注目されている。我々は、Hinsberg型ピロール合成反応とPd触媒クロスカップリング反応を組み合わせた効率的で柔軟性に富んだ3,4-ジアリールピロール型海洋アルカロイドの化学合成法の開発に成功した。また、この手法を用いてラメラリンGトリメチルエーテル、ニンガリンBヘキサメチルエーテル、パーメチルストルニアミドA等の全合成または形式合成を達成した。 具体的には、N-アリールエチルイミノジ酢酸メチルとシュウ酸ジメチルとのHinsberg反応で3,4-ジヒドロキシピロール誘導体を合成した後、無水トリフルオロメタンスルホン酸無水物と処理し3,4-ビストリフラート誘導体に変換した。この化合物と種々のアリールボロン酸とのPd触媒クロスカップリングを行った所、3,チジアリールピロール誘導体が高収率で得られた。また、2種の異なるアリールボロン酸を段階的に反応させると非対称の3,4-ジアリールピロール誘導体も良好な収率で得ることができた。このようにして得られた3,4-ジアリールピロール-2,5-ジカルボン酸エステル誘導体の一つは、多剤耐性逆転作用(MDR reversal activity)を示すパーメチルストルニアミドA合成の鍵中間体であった。さらにジエステルから誘導されるラクトン-エステルの加水分解、脱炭酸によりニンガリンBヘキサメチルエーテルを合成した。またニンガリンBヘキサメチルエーテルは、PIFA-BF_3と処理すると酸化的閉環が進行しラメラリンGトリメチルエーテルが高収率で得られた。
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