研究課題/領域番号 |
14580616
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松永 勇 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (00254425)
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研究分担者 |
城 宣嗣 理化学研究所, 生体物理化学研究室, 主任研究員 (70183051)
小倉 壽 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10115222)
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キーワード | シトクロムP450 / ペルオキシゲナーゼ / 過酸化水素 / ペルオキシダーゼ / モノオキシゲナーゼ / 反応機構 / 脂肪酸 |
研究概要 |
脂肪酸水酸化ペルオキシゲナーゼP450_<BS_β>を、バイオセンサーやバイオリアクター等の生物素材として利用する為には、本酵素の反応機構を詳細に解明する必要がある。そこで我々は、ペルオキシダーゼの基質である、tetramethylbenzidine (TMB)を用いて、その反応機構を解析した。P450_<BS_β>は脂肪酸基質の非存在下では、過酸化水素を反応系に加えてもTMBを酸化することは出来なかったが、脂肪酸基質の共存下では、通常の脂肪酸水酸化反応のみならず、TMB酸化反応をも触媒した。既知のP450は、TMBの酸化の様なペルオキシダーゼ活性を示さない。そこでこの現象を更に詳しく調べる為に、速度論的解析を行った。その結果、脂肪酸水酸化反応とTMB酸化反応では同じ反応中間体が用いられることが示唆された。重要なことは、この反応中間体が脂肪酸が酵素に結合している時にのみ生じることであり、残念ながらその中間体を分光学的に捉える事には成功していないが、P450_<BS_β>の結晶構造解析からは、脂肪酸のカルボキシレートが、過酸化水素の開裂に重要であると考えて矛盾のない結果が得られている。そこでこのカルボキシレートと相互作用があることが既にわかっているArg242を、Lysに代えた変異酵素のペルオキシダーゼ活性について調べた。Arg242Lys変異体では、脂肪酸水酸化活性よりもTMB酸化活性が強かった。これはArgからLysの変化により、脂肪酸基質の位置が変化し、生じた高反応性酸素原子が脂肪酸を攻撃し難くなるためと推測された。更にこの変異酵素のペルオキシダーゼ活性は、脂肪酸基質の攻撃部位をD化する事によって一層強調され、ほとんどペルオキシダーゼ活性のみを示すまでとなった。即ち、完全では無いにしろオキシゲナーゼをペルオキシダーゼに改変する事が出来たのである。これらの結果から導ける重要な事柄のひとつは、オキシゲナーゼであるP450と西洋わさびのペルオキシダーゼの反応の違いが、従来考えられてきた様にそれらの第5配位子に依存するよりは、ヘム遠位の構造と、そこにどの様な基質が結合しうるかという点にあることが強く示唆される事である。
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