本研究の目的は、骨代謝のメカニズムに立脚したバイオアッセイ法を駆使して、ヒトの骨形成促進に著効を示すシード化合物を天然資源より探索することである。発見した化合物は骨疾患治療薬のリード化合物としての可能性と、骨代謝に関わる細胞内情報伝達系解析のツールとしての有用性を持っている。探索の対象となる天然資源は、共同研究者木下が沖縄県西表島などの南西諸島において採集した植物である。既に採集済みの南西諸島産植物についてメタノール抽出エキスを調製し、ヒト骨芽細胞株Saos-2に投与した。6時間培養した後に収穫し、骨芽細胞分化成熟因子(PEBP2 αA/CBFa1)と破骨細胞分化調節因子(RANKL/ODF及びOPG/OCIF)の遺伝子発現の変動度を測定した。また、ヒトT細胞株Jurkatにも同様な処理を施し、Interleukin-2(IL-2)の遺伝子発現に対する影響を調べた。250種類の植物エキスのうち、11種類にIL-2遺伝子発現増強作用が見出された。このうち、植物tk-241の幹をメタノールで大量に抽出し、シリカゲルカラムクロマトによる分離を繰り返して最終的にIL-2遺伝子発現を増強する活性本体MORI-2を単離した。活性化合物MORI-2は各種機器スペクトルよりモノテルペンの一種であることが判明した。骨芽細胞におけるスクリーニングの結果判定とそれに基づいた活性化合物の単離同定は平成15年度に行う予定である。
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