骨代謝は骨形成を司る骨芽細胞と骨吸収を司る破骨細胞のバランスの上に成り立っている。骨芽細胞の分化成熟を調節する因子としてPEBP2αA/CBFa1が知られている。また、破骨細胞の分化成熟を調節する因子として骨芽細胞由来のRANKL/ODF及びOPG/OCIFが知られている。本研究の目的は、これら骨代謝のメカニズムに立脚したバイオアッセイ法を駆使して、ヒトの骨形成促進に著効を示すシード化合物を天然資源より探索することである。発見した化合物は骨疾患治療薬のリード化合物としての可能性と、骨代謝に関わる細胞内情報伝達系解析のツールとしての有用性を持っている。探索の対象とした天然資源は、共同研究者木下が沖縄県西表島などの南西諸島において採集した植物であり、これらのメタノール抽出エキスを調製し、マウス骨芽細胞株MC3T3-E1に投与して、PEBP2αA/CBFa1及びOPG/OCIFの遺伝子発現の変動度を測定した。その結果、ハドノキ幹(Oreocnide pedunculata、イラクサ科)にPEBP2αA/CBFa1遺伝子発現増強活性が、アオガンピ葉(Wikstroemia retusa、ジンチョウゲ科)にOPG/OCIF遺伝子発現増強活性が検出された。また、ヒトT細胞株Jurkatにも同様な処理を施し、Interleukin-2(IL-2)の遺伝子発現に対する影響を調べた。250種類の植物エキスのうち、11種類にIL-2遺伝子発現増強作用が見出された。このうち、ミフクラギ幹(Cerbera manghas、キョウチクトウ科)をメタノールで大量に抽出し、シリカゲルカラムクロマトによる分離を繰り返して最終的にIL-2遺伝子発現を増強する赤色化合物を単離し、各種機器分析によりモノテルペンのcerbinalと同定した。また、シャリンバイ幹(Raphiolepis indica、バラ科)より同様にIL-2遺伝子発現を増強する淡赤白色化合物を単離し、フラボノイドのepicatechinと同定した。
|