1.筋小胞体Ca^<2+>-ATPaseにMg^<2+>とF^-が触媒部位に固く結合したMg^<2+>/F^-/Eは、リン酸化中間体のアナログである。本研究では、その結晶化のために、可溶化Mg^<2+>/F^-/EがCa^<2+>非存在下で長期間完全に安定性を保つ条件を確立した。2.本酵素の細胞質側にはA、P、Nの3ドメインがある。AドメインのVal^<200>ループとPドメインとの相互作用が、Ca^<2+>結合型リン酸化中間体からのCa^<2+>遊離に必須であることを示した。3.Glu^<40>-Ser^<48>ループは本酵素のAドメインと膜貫通ヘリックスM1をつないでいる。このループの適切な長さが、リン酸化酵素の構造転換に必須であることが強く示唆された。さらに、ダリエー病家系で発見された変異Δ41、Δ42、N39D、N39Tではこの反応段階が阻害されており、これらによる小胞体へのCa^<2+>輸送の阻害が細胞内のカルシウムホメオスタシスを乱す可能性を示した。4.本酵素PドメインのArg^<334>がリン酸化酵素の異性化に必須であり、またAドメインのTyr^<122>は、リン酸化酵素の異性化の後、リン酸化中間体からCa^<2+>が遊離する段階に必須であることを示した。これらよりATP加水分解のエネルギーが細胞質ドメイン相互間の大きな動きを通じて膜貫通ドメインのCa^<2+>輸送部位へ伝達されるモデルを提出した。5.本酵素(E2)にBe^<2+>とF、Al^<3+>とF^-、およびMg^<2+>とF^-が結合したBe/F/E2、Al/F/E2、Mg/F/E2の複合体が本酵素のリン酸化中間体とその加水分解過程の安定なアナログであり、各々、基底状態、遷移状態、酵素・生成物複合体のアナログであることを示した。さらに、リン酸化中間体の加水分解過程における触媒部位の変化によりCa^<2+>輸送路が閉じて小胞体内腔からCa^<2+>を漏出させない構造が獲得されることを示した。
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