スプライシングでは、その5'スプライシング部位のU1snRNPによる認識、および3'スプライシング部位のU2AF蛋白質による認識が必要である。U2AF蛋白質は、U2AF65とU2AF35によるヘテロダイマーを形成しているが、本研究ではHis-tagをつけたU2AF35をunfbldした形で精製し、カラム中で別途精製したU2AF65と再構成を行い、PPTに結合しうるU2AFを得ることができた。今回、重水素化などの安定同位体標識を行ったU2AF35をもつU2AF蛋白質を得た。既にU2AF65については、われわれの研究室で、その構造を明らかにしているが、この試料を用いて種々の三重共鳴の実験を行い解析を進めている。また、5'スプライシング部位を認識するU1snRNPの構成成分であるU1C蛋白質についてその構造をNMR法をもちいて決定し、そのN末端部分にMartin-typeのZn finger構造をもち、その後ろにhelix-turn-helix様構造の部分をもつことを明らかにした。天然には、蛋白質成分を必要とせずに自発的にスプライシングを起こすRNA分子がいくつか知られている。テトラヒメナで見られるgroup Iイントロンもその一つである。このRNAについて、切断部位に存在するグアノシン残基を認識する22残着のRNAを化学合成およびT7発現系によって構築し、その構造解析をNMR法によって行った。この結果グアノシン残基がG-G・Cのtriple-baseを作ることによって認識されていることが明らかになった。また、このG-baseの上がわに別の塩基対がstackingし、相互作用を強めていることが明らかになった。この認識様式は、HIV-tar-tatのRNA分子やリボソーマルRNAの中にもこの構造体が存在していることがわかり、RNAの構造体の中において普遍的なモチーフであると考えられる。
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