研究概要 |
われわれは既に、常温性の藍藻由来のNifU蛋白質が2Fe-2S型の鉄硫黄クラスターを保持し、そのクラスターを基質蛋白質であるアポ型のferredoxin分子へとin vitroにおいて効率よく転移することができることを示している。この結果は、細胞内で機能する様々な鉄硫黄蛋白質の生合成において、合成された後のアポ型のポリペプチド鎖と、中間サイトに一過的に保持された鉄硫黄クラスターがあれば、最終的にはクラスターの転移反応によって、ホロ型機能分子への変換が行われうることを示した世界で初めて実験結果である。本年度の研究では、以下の解析を進めた。 らん藻Synechocystis PCC6803、好熱性らん藻Thermosynechococcus elongatus、シロイヌナズナ葉緑体における鉄-硫黄クラスター形成機構の解析 NifU, IscAホモログ上に一過的なクラスターが構築される過程、すなわち鉄-硫黄クラスター形成過程の核となる反応の全体像の解明を目指し、まず、こららの蛋白質を大腸菌にて大量発現させ、一過的なクラスターが保持された状態での精製条件を確立した。これらの精製標品を用いて、物理学的な性質、オリゴマー存在様式、クラスター転移能、など詳細に解析した。それと並行して、立体構造を解明すべく、結晶化条件のスクリーニングをおこない、現在までにいくつかのホモログ蛋白質において結晶を得ることに成功している。また、こられの中でIscAホモログについては、X線結晶構造解析のデータ処理の段階に進んでいる。 また、基質のアポ型蛋白質とのNifu, IscA蛋白質との相互作用複合体、Nifuに鉄-硫黄クラスターを構築する蛋白質とNifU蛋白質との複合体についても、その立体構造の解明は大いに興味を持たれるところである。そこで転移反応等が途中で止まるような変異蛋白質を利用することで、通常では安定には存在しない複合体が安定化されることを考え、現在、さまざまな変異体を作製し、その相互作用を解析している。 さらに、これらNifU, IscAホモログのin vivoにおける役割を明確にするため、らん藻およびシロイヌナズナのノックアウト体を作製して解析を進めた。
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