1.エンドHSの標的糖タンパク質の存在の検証と特定 エンドHSの作用を受けた標的糖タンパク質(TGP)は口腔内組織結合上皮細胞よりも剥離上皮細胞に多く存在し、白血球系細胞には存在しなかった。細胞の剥離とともにエンドHSの作用を受けたTGPが増加していると考えられた。また、In-gel deglycosylation法で、組織結合上皮細胞からMW55K(TGP55)、剥離上皮細胞からMW20K(TGP20)、50K(TGP50)、MW102〜116K(TGP102〜116)のタンパク質をTGPとして特定した。 2.標的糖タンパク質TGP55およびTGP50の同定 TGP55とTGP50を精製した。TGP55のN-末端アミノ酸はアセチル化されていた。脱アセチル化TGP55のN-末端アミノ酸配列はヒトサイトケラチン13の内部配列と最も相同性が高かったが、N-末端アミノ酸配列が相同性を示すタンパク質はなかった。TGP-50のN-末端アミノ酸も修飾されていた。その内部アミノ酸配列はヒトType Iサイトケラチン13と極めて相同性が高く、TGP50はサイトケラチン13かその類似タンパク質と考えられた。ヒトType Iサイトケラチン13にはアスパラギン結合型糖鎖結合部位が1ヶ所存在し、エンドHSはこの部分の脱糖鎖を介して上皮細胞分化に関与しているものと考えられた。 3.抗TGP55モノクローナル抗体の作製とこれを用いた免疫化学的、細胞組織学的解析 作製した3種の抗TGP55モノクローナル抗体はTGP55以外の数種の上皮細胞タンパク質とも結合し、その種類は各抗体間および上皮細胞の剥離前後で異なっていた。また、共焦点顕微鏡を用いた蛍光抗法によって、抗TGP55抗体によって上皮細胞の周辺部が主に染色され、TGP55は上皮細胞の周辺部に局在し、その分布は上皮細胞の剥離前後で変化していた。
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