1.ヒスチジノールリン酸アミノ基転移酵素(HPAT)の分光学的・速度論的解析。HPATはヒスチジノールリン酸(HisP)と2オキソグルタル酸(2OG)との間の可逆的アミノ基転移反応を触媒する。またアミノ基転移反応の全反応は2つの半反応からなりたっている。HPATはPingPong-BiBiメカニズムによりアミノ基転移反応を行い、その比活性は全反応において23sec^<-1>でHisPおよび2OGに対するK_mはそれぞれ0.2および1.2mMであった。PLP型酵素の吸収スペクトルはpH依存性を示し、酸性pH領域で430nmに、アルカリpH領域で340nmに吸収極大を示した(pK_a=6.6)。CDスペクトルにおいても430nmおよび340nmに正のCDを示し吸収スペクトルの場合と同様なpH依存性を示した。一方、PMP型酵素の吸収スペクトルは329nmに吸収極大を示したが、CDスペクトルにおいては、正のコットン効果の見られるアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)と異なり、この波長にコットン効果は見られなかった。このことは両酵素において補酵素近傍の環境が異なることを示す。半反応では、本酵素はHisPやグルタミン酸を良好な基質としたが、グルタミン酸より炭素数が一つ少ないアスパラギン酸に対してはほとんど活性を示さず、また芳香族アミノ酸も基質としなかった。 2.グルタミン:フェニルピルビン酸アミノ基転移酵素(GlnAT)の分光学的・速度論的解析 GlnATはHPATおよびASTと同様サブグループIアミノ基転移酵素に属する。本酵素の基質認識・触媒反応機構を明らかにすることはHPATの基質認識・触媒反応機構を理解するのに有用であるだけでなく、ASTで得られた知見と組み合わせることで本グループが触媒する反応のメカニズムをより一般化できると考えた。本年度は高度好熱菌由来のGlnATについて遺伝子のクローニング・酵素の大量発現系の確立を行い、さらにその酵素の分光学的・速度論的解析を行った。Stopped-flow法を用いて半反応を解析した結果、本酵素は芳香族アミノ酸やメチオニンおよびキヌレニンを良好な基質とした。また酸性アミノ酸や2OGは基質とならなかった。PLP型酵素の吸収スペクトルはpH依存性を示したが、そのpK_aは9.3と高かった。このことから本酵素においては、HPATやASTとは異なるSchiff塩基の活性化機構が存在することが示唆された。
|