小胞体Ca^<2+>ポンプの構造機能連関及びその異常によるダリエー病発症の機構

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14580639
• 研究機関: 旭川医科大学
• 研究代表者: 鈴木 裕 旭川医科大学, 医学部, 教授 (50183421)
• 研究分担者: 加藤 早苗 旭川医科大学, 医学部, 助手 (80291061) ; 山崎 和生 旭川医科大学, 医学部, 助手 (60241428) ; 大保 貴嗣 旭川医科大学, 医学部, 講師 (90207267)
• キーワード: 小胞体 / Ca ^<2+>ポンプ / Ca ^<2+>-ATPase / ドメイン構造 / ドメイン相互作用 / ダリエー病 / 遺伝病 / Ca ^<2+>動態

研究概要

1.小胞体Ca^<2+>ポンプによるCa^<2+>輸送機構の解明のため、ポンプの構造と機能について以下を明らかにした。
(1)ポンプの細胞質3ドメイン(N,R,Aドメイン)はCa^<2+>輸送サイクルにおいて4つの異なる集合状態を変化することを発見した。そして自己リン酸化中間体の異性化反応におけるAドメインの90°以上にも及ぶ回転とP/Nドメインへの集合が、膜貫通ヘリックス上のCa^<2+>結合部位の構造を変化させCa^<2+>を小胞体内腔に放出させることを明らかにした。
(2)細胞質3ドメインの大きな動きと集合を可能にする構造因子を部位特異的変異と速度論的解析により、残基レベルで明らかにした。Aドメイン先端ループがPドメインのループと相互作用することにより、自己リン酸化中間体における細胞質3ドメインの固い結合に寄与することを解明できた。
(3)自己リン酸化中間体の原子レベルの構造解明に資するため、その構造アナログ(Mg/F/酵素複合体)を開発し、三次元結晶形成のための可溶化・精製と長期安定化の条件を開発した。
2.小胞体Ca^<2+>ポンプ遺伝子異常によるダリエー病の発症機構解明のため、以下を明らかにした。
(1)約50ものダリエー病家系がそれぞれ保持する遺伝子異常のすべてについて、ポンプ蛋白に与える影響を解析し、細胞における発現を激減させる変異あるいはポンプ機能異常を引き起こす変異があること、さらに機能異常の内容も変異に依存して異なることを明らかにした。
(2)野生型に近い発現量とCa^<2+>輸送活性を保持するCa^<2+>ポンプ変異体について速度論的解析を行ない、Ca^<2+>輸送におけるCa^<2+>親和性の低下、あるいは輸送活性の若干の低下、のいずれかあるいは複合的な異常を保持していることを明らかにした。僅かのCa^<2+>動態の乱れにより発症に至ることが示された。

研究成果

• [文献書誌] Sanae Kato, Mika Kamidochi, Takashi Daiho, Kazuo Yamasaki, Wang Gouli, Hiroshi Suzuki: "Val^<200> Residue in Lys^<189>-Lys^<205> Outermost Loop on the A Domain of Sarcoplasmic Reticulum Ca^<2+>-ATPase Is Critical for Rapid Processing of Phosphoenzyme Intermediate after Loss of ADP Sensitivity"The Journal of Biological Chemistry. 278・11. 9624-9629 (2003)
• [文献書誌] Kazuo Yamasaki, Takashi Daiho, Hiroshi Suzuki: "Remarkable Stability of Solubilized and Delipidated Sarcoplasmic Reticulum Ca^<2+>-ATPase with Tightly Bound Fluoride and Magnesium against Detergent-induced Denaturation"The Journal of Biological Chemistry. 277・16. 13615-13619 (2002)
• [文献書誌] Takashi Daiho, Kazuo Yamasaki, Tomoyuki Saino, Mika Kamidochi, Katsuhiko Satoh, Hajime Iizuka, Hiroshi Suzuki: "Mutations of Either or Both Cys^<876> and Cys^<888> Residues of Sarcoplasmic Reticulum Ca^<2+>-ATPase Result in a Complete Loss of Ca^<2+> Transport Activity without a Loss of Ca^<2+>-dependent ATPase Actlvity ROLE OF THE CYS^<876>-CYS^<888> DISULFIDE BOND"The Journal of Biological Chemistry. 276・35. 32771-32778 (2001)
• [文献書誌] Stefania Danko, Takashi Daiho, Kazuo Yamasaki, Mika Kamidochi, Hiroshi Suzuki, Chikashi Toyoshima: "ADP-insensitive phosphoenzyme intermediate of sarcoplasmic reticulum Ca^<2+>-ATPase has a compact conformation resistant to proteinase K, V8 protease and trypsin"FEBS Letters. 489・2-3. 277-282 (2001)
• [文献書誌] Stefania Danko, Kazuo Yamasaki, Takashi Daiho, Hiroshi Suzuki, Chikashi Toyoshima: "Organization of cytoplasmic domains of sarcoplasmic reticulum Ca^<2+>-ATPase in E_1P and E_1ATP states : a limited proteolysis study"FEBS Letters. 505・1. 129-135 (2001)
• [文献書誌] 鈴木 裕: "Ca^<2+>ポンプ"シリーズ・バイオサイエンスの新世紀 感覚器官と脳内情報処理. 12. 121-128 (2002)