研究概要 |
小胞体Ca^<2+>ポンプはATP分解にエネルギー共役してCa^<2+>を細胞質から小胞体内腔に輸送し、細胞Ca^<2+>動態を制御する。我々はCa^<2+>輸送過程でポンプの細胞質3ドメイン(N,P,A)の集合状態が顕著に変化すること、特に自己リン酸化反応中間体の構造異性化(E1P→E2P)ではAドメインが90゜以上も回転しP, Nドメインに固く結合することを発見し、これによって得られる構造エネルギーがCa^<2+>輸送部位(膜貫通ドメイン)に伝達されその構造を変化させて小胞体内腔へのCa^<2+>放出を引き起こすことを示唆した。本研究では先ず下記のように、部位特異的変異と速度論的解析により、細胞質ドメインの動きと相互作用を担う領域を明らかにして機能の具体を解明した。 1.AドメインとM1を連結するGlu40-Ser48ループはその適切な長さにより、リン酸化中間体の異性化反応におけるAドメインの大きな動きとそれに連動したM1の構造変化を可能にする。 2.Pドメイン/M4連結領域のArg334とAドメイン/M2連結領域のTyr122は、それぞれリン酸化中間体の異性化反応とそれに続くCa^<2+>放出に必須なAとPドメインの動きおよび相互作用を可能にして、細胞質触媒部位とCa^<2+>輸送部位間のエネルギー共役に必須な役割を果たす。 3.Aドメイン先端Val200ループはE2PにおけるA-Pドメインの強い結合を可能にして、内腔へのCa^<2+>放出に必要な構造エネルギーを産出することを明らかにした。 他方、リン酸化中間体構造解明に供するため、この中間体の安定な構造類似体を開発し、さらに3次元結晶化可能な条件を確立した。 また、ダリエー病原因遺伝子変異(Δ41,Δ42,N39D,N39Tの4家系における変異)のCa^<2+>ポンプに対する影響を明らかにして、分子レベルからの発症機序解明に貢献した。
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