研究課題/領域番号 |
14580647
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
門松 健治 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80204519)
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研究分担者 |
村松 寿子 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50182134)
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キーワード | ミッドカイン / LRP / ヌクレオリン / 核移行 / 成長因子 / LDL受容体 / プロテアゾーム / リソゾーム |
研究概要 |
ヘパリン結合性成長因子ミッドカイン(MK)はヒト癌の発生進展、神経細胞の生存分化、炎症細胞のリクルートをはじめとする重要な機能を生体内で発揮する。その受容体のひとつとしてLDL受容体ファミリーに属するLRPがある。昨年度の本研究によって、LRPはMKのエンドサイトーシスを担うこと、エンドサイトーシスされたMKは細胞質で細胞質・核シャトル蛋白であるヌクレオリンと結合すること、ヌクレオリンと結合したMKは核へ移行すること、この核移行がMKの抗アポトーシス活性に重要であることを示した。 このようなMKの核移行によるシグナリング系について、では一体どのような終止機構があるのだろうか?今年度はこの疑問に答えるべく研究をし、以下のような結果を得た。 1.細胞内に取り込まれたMKの分解に対して、プロテアゾーム阻害剤とリソゾーム阻害剤は両者ともに同様の抑制効果があった。 2.細胞を核画分と核以外の画分に分けると、核以外の画分ではプロテアゾーム阻害剤とリソゾーム阻害剤はMKの分解を同様に抑制したが、核画分ではプロテアゾーム阻害剤のみが抑制した。 3.細胞をさらに複数のマーカーを用いて厳密に膜画分、細胞質画分、核画分に分画すると、細胞に取り込まれたMKはそれぞれの画分で5分、15分、30分でピークとなることが判明した。つまり、エンドソームに取り込まれたMKは何らかの経路を経て細胞質へ漏出し、さらにここから核へ移行することが示唆された。 4.以上の結果から、細胞質へ漏れ出て核へ移行するMKがプロテアゾームで分解されることが予想された。そこで細胞質内でMK蛋白を発現させると、MKはユビキチン化されることが明らかになった。 5.MKは大きくN末側半分とC末側半分の2つのドメインから成る。これらのドメインに機能分担があるのかをみるためにそれぞれのドメインを単独で、あるいはGFP融合蛋白として細胞質へ発現させた。N末側半分は半減期が5分以内できわめて短く、C末側半分は20分、全長のものは70分であった。これらの半減期はプロテアゾーム阻害剤で有意に延長した。すなわち細胞質へ漏出後のMKの安定性には全長が必要だが殊にN末側半分が分解されやすいことがわかった。 6.一方、MKの核への移行はC末側半分で十分であることが明らかになった。 7.以上をまとめると、MKの核移行に伴うシグナリングの終止にはプロテアゾームによる分解が重要である。MK分子のN末側半分が特に分解に関与が強く、一方、C末側半分は核移行を担うと考えられる。
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