研究概要 |
イソクエン酸脱水素酵素(ICDH)は,TCA回路中やグルタミン生合成経路において重要な役割を果たす酵素である。本酵素は細菌由来のものでは補酵素としてNADP^+を要求するものがほとんどであるが,我々が発見した化学合成独立栄養細菌である硫黄酸化細菌Acidithiobacillus thiooxidans中のICDHは補酵素としてNAD^+を要求する。NAD^+依存型ICDHのX線結晶構造解析の例はなく,今回本酵素の立体構造を明らかにするため,本酵素の大量発現・精製系を確立し,性質検討及び結晶化を行った。 初めに大量発現系の構築を行った。すでに構築されていた発現プラスミドpLWDlを鋳型とし,ICDH遺伝子部分をPCRで増幅させ,pKK223-3にライゲーションし大量発現用プラスミドpKKICDHを作成した・大腸菌JM109を形質転換させ本酵素を発現させt。次に酵素精製は,熱処理60℃5分間を行うことで大腸菌由来のICDHを取り除き,DEAE-ToyopearlとSephacryl、S-200HRを用いて行った。電気泳動的に均一に精製されていることが確認されたので,この酵素標品を用いて性質検討と結晶化を行った。大腸菌クローン株から精製した本酵素の性質は,元株A.thiooxidans由来の精製された酵素と比較して,至適pH・至適温度・基質特異性・補酵素特異性及ぴ金属要求性についてほぼ同じ性質を示した。結晶化の条件検討を行ったところ,ICDH-NAD^+複合体の状態で,沈殿剤にcitrateを用いたときに結晶が得られ,現在2.4Åまでの解析データが得られている。興味がもたれる炭酸固定反応については,現在検討中である。今後,今回確立した発現・精製系を用いて精製酵素を得,X線結晶構造解析及び炭酸固定反応の検討を進めていく予定である。
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